キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
夕刻時になると今度は仕事帰りのビジネスマンやOLが多くなる。
「茉緒ちゃ~ん、コーヒーおかわり、いいかな?」
「は~い」
ここでバイトをするようになって二カ月弱、常連さんにも覚えてもらえるようになってこうやって声を掛けてもらうことも多くなった。
気さくに話しかけてくれる人が多くて、「ひろちゃんもこれで安心して産休入れるね」なんて言って喜んでくれた。
おかわりのコーヒーを持って常連の時田さんの許へ行くと彼は何やら分厚い本を開き難しい顔をしていた。
「はいどうぞ、時田さん難しそうな本を読んでますね?」
「ああ、宅建の試験が近くてね」
宅建とは、宅地建物取引士という不動産売買や賃貸の仲介に不可欠な国家資格のことで、不動産屋に務めている時田さんはその資格取得のために勉強してるのだと説明してくれた。
「はあ、ちらっと見ても私にはちんぷんかんぷんです。すごいですね時田さん。試験、頑張ってくださいね」
「う、うん。頑張るよ」
照れたように頭を搔く時田さんは私とそんなに歳は離れてないと思うのにとてもしっかりしている人だ。私も見習わないとな。
「資格かあ」
「どうしたの? 茉緒ちゃん」
カウンターに戻ると私の呟きを聞いて寛子さんが首を傾げる。
「私、簿記と車の免許ぐらいしか資格持ってないので、就職先探すのに資格なにか取った方がいいかなと思って」
「そっか、茉緒ちゃん私が復帰したらちゃんと就職したいって言ってたもんね」
ちょっと寂しそうに言った寛子さんに私もちょっと寂しくなった。
せっかく寛子さんたちと仲良くなって仕事も覚えたこの喫茶マリンを辞めるのはちょっと惜しいなと早くも思っている。
< 123 / 252 >

この作品をシェア

pagetop