キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
ドレスを選び、小物も一式揃え、ヘアメイクまでしてもらって鏡の前に立つ。
髪をアップにしてばっちりメイクのいつもとは違う自分が映った。
光沢のある黒のノースリーブのドレスは背中が大胆に開いていて大人っぽく妖艶さを醸し出している。
メイクも大人っぽく見えるようにオーダーした。
智成の隣に立っても見劣りしないように、少しでも相応しく見えるように。
元々たれ目気味で童顔なので限界はあるけれど、スタッフさんのお世辞と力を借りて魔法に掛けられたつもりで少しだけ勇気を持って智成の許へ。
スーツに着替えていた智成の立ち姿につい見惚れてしまう。
いつも見慣れているのに今日は見違えるほどカッコよく見えた。
これも智成の魔法なのだろうか? と、浮かれたことを思う。
「茉緒、すごく綺麗だ、似合ってる」
「智成も、いつも以上に素敵」
支度を整え対面した私たちは、息を吞むように見つめ合い、ふたりで褒め合ってスタッフにくすくす笑われ照れてしまった。
「セクシーなドレスのおかげかいつもより大人っぽい」
「ちょっと、それ普段は子供っぽいって言ってる?」
「少なくとも普段はこんな色気はないよな」
いつものように意地悪にからかわれてちょっとムッとしてニヤッと笑う智成と目が合ってふたりで噴き出した。
そして、優しくエスコートしてくれる智成にときめきつつ、連れてこられたのは意外にも住宅街の一軒家。
またどこにつれてこられたのかと思っていたら、そこは看板も出していない知る人ぞ知るフレンチの名店だった。
美しく整えられた庭が見える個室に通され、椅子に座ると智成が私の後ろに立つ。
「どうしたの?」
「茉緒、目を瞑って」
「う、うん」
なんだろうと思いつつ目を閉じると、首元にひやりと冷たい感触。

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