キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
私は我慢できなくてかおりさん本人にちゃんと仕事してくださいと直談判した。
浩紀と付き合ってることは伏せたつもりだったけど彼女は知っていて、勝気な態度で私を挑発してくる。
「あら、私は配送の仕事を手伝っているのよ。ちゃんと仕事してるの。それに、浩紀は私のことが好きなのよ? 浩紀のことを思うなら本当に好きな人と結ばれてほしいでしょ? だから早く別れてあげて」
ニヤニヤと半笑いで言われた時には背筋が凍った。
もちろん、仕事を手伝ってるなんて嘘。彼女はただトラックに乗って他愛無いことを話しているだけと浩紀に聞いている。
それに浩紀はかおりさんのことはなんとも思ってない、私が好きだとちゃんと言ってくれた。
騙されるものかと浩紀を信じていたけれど、その頃から、会社内で私を見てはこそこそ話している人たちが気になりだした。
そして滝ちゃんから事の真相を知る。
「私と、社長が不倫!?」
晴天の霹靂とはこのことだ。
まさに雷に打たれたような衝撃に私は頭が真っ白になった。
言葉を失う私に滝ちゃんは事実なの? と確認してくる。
もちろん、そんな事実は微塵もない。
社長と私は少し気安く話せて仕事を頼まれることが多いというだけ。
プライベートで会ったことはないし、親子ほど年が離れているのだ、社長のことは父のように思ってるくらいで、社長だって私を娘みたいに思ってる程度だろう。
なんでそんな話が噂されてるのか理解できない。
滝ちゃんには事実無根だと訴えわかってくれたけど、元々社長の手伝いで社長室に出入りしていたし、気安く話していたのが親密な関係と見て取れたのだろう、噂を信じ切ってしまった社内の人たちにはいくら嘘だと訴えても疑いの目は変わらなかった。

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