ハニー、俺の隣に戻っておいで
しかも、飲み始める前にジェームズに電話したこともはっきりと覚えており、そのとき彼は躊躇いもせず直ぐに迎えに来てくれると言ったではないか。

「昨夜、意識を失う前ジェームズに電話して、家に送ってくれるように頼んだはずよ。 二人で結託して私をここに連れて来たの?」

ジョンは呆気にとられて言葉を失ってしまった。 彼にしてみれば、女性を連れ去るだけなら別に誰かと共謀する必要などないからだ。

ところが、ニーナは目を覚ました時ジョンに感謝すらしなかったばかりか、 彼の前で堂々とジェームズに言及するという大胆な行動に打って出たのだ。

がっかり気落ちした彼は、「ジェームズは結局来なかったから、おまえが俺に連れて行けと頼んだんじゃないか」と反論する。

ニーナは信じられないという様子で目を見開いて びっくり仰天する。

「ジェームズは迎えに来なかったの?

それで、私があんたに連れて行けって頼んだの?」

ニーナは初め全く信じていなかったが、ジョンの無関心なポーカーフェイスは真実を語っているようにも見える。

ジョンは自分の言ったことをニーナがすでに信じ始めているのを目にすると狡そうに鼻を鳴らし、「昨夜おまえはどうしても連れて行けと言って俺を脅したんだぞ。しかも、俺にお仕置きするとかほざいてたぜ」と言って追い討ちをかける。

ニーナが彼の耳元でそう呟いたのは事実だった。 もし普段の口調でそう言ったとしたら、ニーナが本当にやりかねないのはジョンも知るところだ。

しかし、酔っ払った彼女はいつもとは性格が全く違い、 あのとき彼女が言ったことを思い出すと、彼はむず痒さと興奮を感じずにはいられなかった。

彼女がもし、昨夜ベッドの上で本当にジョンにお仕置きしたいと思っていたなら、彼は間違いなく喜んで身を任せていただろう。
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