ハニー、俺の隣に戻っておいで
そのときニーナの怒りはまだ限界に達していなかったが、イザベラは火に油を注いでしまった。 こいつはニーナを脅せば簡単に付け込めるとでも思っているのだろうか?

こうなっては、古い友情など惜しくもなんともない。

ニーナは、「イザベラ、あんたが私を罠にかけてジェームズを手玉に取ろうとしなければ、こんなことにはならなかったのよ!」と言って嘲笑った。

「違うわ! そんなの嘘よ!」 イザベラが猛然と反論する。 「あなたがジェームズを誘惑したんじゃない。あんたが彼に誤解させたのよ。 私を殴ったのを忘れたの?」

イザベラは激昂し、ニーナをその場で殺してしまいそうな眼差しで睨みつけたが、 あまりにぎゅっと手を握りしめたせいで、持っていたバッグが変形するほどだった。

「結局、自業自得じゃない。 全部あんたのせいよ」 二人が話している間、ニーナは立っていたが、イザベラはまだ地べたに座っていたので、 ニーナがイザベラを見下ろす形になり、 遠くからだとイザベラの方がニーナに虐められ、やり込められているように見える。

イザベラはニーナの厳しい言葉を聞くともう何も言えず、執拗に泣き続ける。

「正直に教えてくれない? なぜあの香水をくれたの? どうして学校のフォーラムで私の陰口を言ったの? なんで私を裏切ったの?」 ニーナが感情を露わにして尋ねる。 彼女はいつもその理由を知りたがっていたが、今までイザベラに尋ねる機会がなかったのだ。

しかも、また酷い目に遭わされる可能性もあったので、あえて訊こうとしなかったというのもある。 イザベラはニーナがこれまでの人生十八年の中で初めて作った友人で、 丸二年間行動を共にしていた。 そしてずっと、イザベラに対して悪いことなどしたことはないと思っていたのだが。
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