ハニー、俺の隣に戻っておいで
「ソン家のアルバートってこと?」
ジェームズは信じられないという様子で尋ねる。

イザベラは頷いて同意した。

「だったら何だと言うのさ? ソン家が俺に手出しすると思うか?俺は、弱い者いじめをする奴が大嫌いなんだ。こいつ、アルバートと付き合っているからって何してもいいなんて勘違いしてるんじゃないか?」
街でアルバートよりも有力なのは彼だけだ。

ニーナは、二人の会話がますますバカバカしくなってきたので、 冷ややかに眺めていたが、ようやくイザベラが何を企んでいるのかを理解した。

そして、この茶番劇ももうすぐ終わると思ったが、すでに痺れを切らしていた。彼女が登場して無実を証明する時が来たのだ。

「私がひっぱたいたって言うの?」
ニーナはずいっと一歩前に出ると、ジェームズの肩を二本の指でそっと押しのけ、イザベラの赤く腫れた顔を冷たく見つめた。

「いや、いや……」
イザベラは見るからに怯えきってうなだれ、また泣き始める。これではあまりに哀れっぽいので、誰だって助けようと言う気になっただろう。

「おまえがひっぱたいたんじゃないか。 俺は見たぞ!」
ジェームズはニーナがやったと断固主張する。

しかし、ニーナは落ち着き払って、「ジェームズ、ちょっと邪魔しないで」と言った。 ジェームズと諍いを起こしたくはないのだ。

ニーナはジョンの逆鱗に触れて以来、シー家のことを少し調査していた。

シー一族が高い地位にあるのがわかったのだから、できるだけ避ける努力をした方がいい。万一何か起きたときに巻き込まれるのは御免だからだ。

「俺は、目の前で女の子が虐められているの見て黙ってはいないぜ」
ジェームズはニーナを止めようと手を伸ばした。

けれどもニーナはとっくに痺れを切らしていたので、イザベラを彼の背後から引っ張り出すとギロリと睨みつけた。

「私にひっぱたかれただって? 私が何するかよく見ていなさい!」

「ニーナ、 何するつもり?」
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