政略結婚のはずですが?~極甘御曹司のマイフェアレディ計画~
「はい。
私は古手川さんを助けたいです」

視線は絶対に逸らさずに強い意志を込めて答えると、零士さんは目尻を下げて満足げに頷いた。

「それでこそ、俺の清華だ」

ちゅっと軽く、彼の唇が重なる。

「清華のお願いだからな、俺が絶対に叶えてやる」

自分からお願いしておいてなんだが、本当に零士さんに甘えていいのかな。
少なくとも零士さんには、不快な思いをさせているのに。

「零士さん……」

――私に、なにか言いたいことはないですか?

そう言いかけた言葉は飲み込んだ。
零士さんの目が、あれは見なかったことにするよと語っていたから。

「あとは俺に任せて、清華は衣装作りとブランド立ち上げに集中したらいい」

「いいんですか……?」

私だけそんな、なにもしないだなんて。
目を合わせたまま零士さんが唇を重ねる。

「清華の心配事はすべて取り除いて、夢を追いかけることだけに集中できるようにするのが俺の務めだからな」

零士さんは当然だとばかり笑っているが、……そんなの。

「零士さん!」
< 176 / 252 >

この作品をシェア

pagetop