今さら好きだと言いだせない
 それから十日ほど経ったころ、研究部に出向いた帰りに廣中とバッタリ出くわした。
 互いに「お疲れ様」と声を掛け合いながら歩く。

「聞いたよ、南帆とのこと」
「廣中まで巻き込んで……悪い」

 微妙な表情で謝りの言葉を口にすれば、廣中はあきれた顔をして笑っていた。

「高木さんから守るためでしょ。南帆はかわいいから狙われやすいしね。でも明日の飲み会は私も一緒だから安心していいよ」
「飲み会?」
「あれ? 南帆から聞いてない?」

 驚いた俺は思わず歩みを止める。
 飲み会があるのか? しかも明日? それはいつから決まっていたのだろう。そんな話は一切俺の耳に入っていない。

「営業部主催の飲み会。南帆が誘われたから、私もついて行くことになったんだけど……」

 営業部か。あの部は飲み会でコミュニケーションを取ろうとする人間が多いから、しょっちゅう飲みに行ってるのは知っている。
 だけどなぜ町宮を誘うんだよ。そこには下心しかないだろう。

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