今さら好きだと言いだせない
「それ、俺も行く」

 あご元に手をやりながら考えた末、出した結論を廣中に話せば彼女は目を丸くした。

「芹沢くんも一緒に?!」
「ああ。俺、彼氏だし」

 偽物だけどな。だから飲み会の話も聞かされていないんだけどな。
 そんなふうに自覚すると心が痛い。

「もしかして、芹沢くんってさぁ……」

 廣中が俺をジロジロと見ながらなにかを言いかけて辞めた。
 意味ありげなその表情に、俺はたじろぎそうになる。

「やっぱりいいや」
「なに? 途中で辞めたら気になるって」
「私のせいで余計ややこしくなったら嫌だから、今は見守ることにする」

 それだけ告げて、廣中はさっさと歩きだしてしまった。
 彼女はなにを言いかけたのだろう。どんなに想像を膨らませてみても、あのあとに続く言葉はひとつしか浮かんでこない。
 だけど彼女は今後、俺の味方をしてくれる可能性大だ。今の態度でそう感じた。

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