今さら好きだと言いだせない
 翌日、仕事を終えた俺たち三人は営業部の飲み会の場所へ足を運んだ。
 居酒屋に入ると同時に、すぐに徳永さんの姿を見つけた。幹事の仕事をしているのだろう。
 飲み会にかこつけて町宮に手を出すつもりなのかどうか、彼女に対して本気なのか、そのへんのところを見極めるために俺は来たのだ。

「もうひとり参加って……芹沢だったか。てっきり女の子かと思った」
「俺ですみません」
「うん、残念だよ」

 残念ってなんだよ。まぁ……飲み会に誘った女が、別の男を連れて来たら面白くはないだろうな。狙っているならなおさら。
 しかし、徳永さんがこんなにストレートに下心を見せるなんて驚きだ。

「彼氏も一緒に連れて行きます、って言えば良かったのに。南帆は恥ずかしがり屋だからなぁ」

 こういうのは先制攻撃に限る。俺の言葉で三人とも凍り付いたように一斉にビキッと固まり、徳永さんの顔から笑みが消えた。
 俺と町宮の交際のことはまだ徳永さんには伝わっていなかったようで、今の攻撃はかなり効いたらしい。
 
 てっきり高木さんが言いふらすと思っていたから、徳永さんが初耳なのは意外だった。
 ということは、今日集まっている営業部の人間も、全員知らないのかもしれない。
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