今さら好きだと言いだせない
「適当に座って?」
「お、お邪魔します」

 芹沢くんは私をリビングに招き、すかさずエアコンをつけて部屋を暖めてくれた。
 さっと上着を脱ぎ、キッチンで食器を出したり、いろいろと準備を進めている。
 自分の家なので手際が良いのは当然かもしれないけれど、まったく無駄のない動作に私は感心してしまった。

「私も手伝おうか?」
「いいよ。すぐ行くから座ってろって」

 私がキッチンに入っても邪魔なだけだろう。なので、彼の言う通りにすることに。
 前から気づいていたけれど、芹沢くんはなんでも器用にこなすタイプで、そこも密かに尊敬している。

「なんだか、借りてきた猫みたいだな」

 リビングのテーブルの前に置いてあった座布団を借りてちょこんと座る私の姿が面白かったのか、ローストビーフの乗った皿と箸を持って戻ってきた彼がクスリと笑った。

「借りてきたって……私はいつも大人しいでしょ?」
「はは。荒々しくはないけど。ていうか……俺にはそんなに警戒するなよ。高木さんじゃあるまいし」

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