今さら好きだと言いだせない
 警戒ではなく、緊張しているだけなのに。
 好きな人の家に初めて来たから、どうしていいかわからずに体が固まってしまっている。

「ローストビーフ! すごくおいしそうだね」
「だろ? 肉の色もいい感じだったから買ったんだ」

 デパ地下で買ったのかな? 盛り付けがとても綺麗なローストビーフサラダだ。
 だけどたしかに、ひとりで食べるには多いかもしれない。
 遠慮しないで食べろとばかりに、芹沢くんがテキパキと皿に取り分けて私の目の前に差し出した。

「味もけっこういけるな」
「ほんとだ!」

 付属されていたソースを付けてローストビーフを口に運べば、お肉がやわらかくてとても上品な味がした。
 好きな人と同じものを食べておいしさを共有できることに、幸せを感じる。

「部屋、すごく綺麗に使ってるんだね」

 あらためて部屋の中を見回してみたけれど、ごちゃごちゃしていなくてスッキリと片付いている。

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