今さら好きだと言いだせない
 しばらくすると芹沢くんからメッセージが来た。
 仕事が終わったら、前にふたりで一度だけ訪れたレトロなカフェで待っていてほしい、と。
 とりあえずそこで落ち合おうという意味だろう。

「今日の町宮はめちゃくちゃ気合い入れて仕事してるなぁ」

 パソコン画面を睨みつけるようにしながらキーボードを叩いているところへ、高木さんに話しかけられた。
 手を止める余裕はないので、チラリと視線を向けて会釈をするだけにしておく。

「今日はクリスマスイヴだから、当然デートだろ?」
「はい。残業したくないんですよ」

 今夜はただのデートではない。
 そんなふわふわとした楽しい気持ちで挑むつもりはないし、むしろ一か八か断崖絶壁から海に飛び込むような心境だ。

 なんとか仕事を定時で終わらせて椅子から立ち上がると、燈子が「がんばって」と小さくファイティングポーズを送ってくれた。
 身支度を整え、軽くメイク直しをしてカフェに向かう。

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