今さら好きだと言いだせない
「ふたりともごめんね。芹沢くん、私のことも話していいから」
「了解です。佐武さん、気をつけて帰ってください」

 なにがなんだかわからず、大きく呼吸をして頭の中を整理していると、佐武さんが「またね」と手を振って去って行った。

「芹沢くん、さっきの言葉は私の本心だから。嘘じゃないよ」

 繋がれた手にギュッと力を込めて見上げれば、やさしい瞳の彼と視線が交錯した。 

「お願い。私を失恋させないで」

 必死に訴える今の私は、(はた)から見たらさぞみっともないだろう。
 イケメン相手にフラないでほしいとすがりついているのだから。
 芹沢くんはあきれたように小さく笑い、私が左腕にかけていたコートとマフラーを奪った。

「とにかく先に着ろよ。こんなに寒いのに。風邪ひくだろ」

 そう言われて初めて、吐き出す息が白くなるほどの寒さなのだと気づく。
 顔も首も肩も冷たくなっていて、もやは感覚がないくらいだ。

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