今さら好きだと言いだせない
「町宮の新しい一面を見て驚いたよ」
「……え?」

 芹沢くんが手際よく私にコートを羽織らせ、マフラーもぐるぐると首に巻き付けた。
 彼はいつだって、こうして私にやさしく接してくれる。それをあらためて実感すれば、泣きたくなってしまう。

「普段はしっかりしてるのに、無鉄砲なところもあるんだな。勢いよく道路に飛び出したりして、事故にあったらどうするんだ」
「ごめん。必死だったから」
「で、俺が好きだって? ……ちゃんと俺から言おうと思ってたのに、先に告白されるとは」

 芹沢くんは冷たくなった私の頬を両手で包み込むように触れた。自然と彼の妖艶な瞳に射貫かれる。

「えっと……芹沢くんは佐武さんが好きなんだよね? ふたりは思い合ってて……」
「違う。佐武さんは高木さんと付き合ってるんだ」
「えぇ?!」

 声をあげながら目を丸くすると、驚きすぎだとばかりに芹沢くんが小さく笑った。

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