今さら好きだと言いだせない
「横浜の彼女さんとは、夫婦になる運命だったんですよ」
「えーっと……妻になる人はその彼女じゃないんだけどな……」

 それがどういう意味なのか、瞬時に理解することができなかった。
 困ったような顔をしながら薄気味悪い笑みを浮かべる徳永さんに対して、ぞわぞわと鳥肌が立つ。

「お相手は海運会社のCEOの娘さん、ですよね? それでそっちに転職するんでしょう?」

 今までヘラヘラと笑っていた徳永さんだったが、芹沢くんの言葉を聞いて初めて驚いた表情になった。

「どこからその情報を……。あぁ、山本さんか」

 芹沢くんと山本さんは兄弟みたいに仲がいいから、徳永さんも容易に情報源の想像がついたようだ。

「あの人はなんなの? 芹沢が営業部に送り込んでるスパイなのか?」
「俺、山本さんのことマジで尊敬してるんで。それ以上侮辱するなら、いくらあなたが先輩だろうとぶっ飛ばしますよ」
「こわっ!」

 芹沢くんの声が凍り付くように冷たい。
 徳永さんは笑い飛ばしたが、芹沢くんは本気で言ったのだと思う。

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