今さら好きだと言いだせない
 高木さんがうちの部に異動になって四ヶ月経ったころ、横浜支社から徳永さんが転勤でやって来た。営業部の人員補充のためだそうだ。
 どんな人かと思えば徳永さんは物腰がやわらかく、高木さんとは違って仕事ができる人だった。
 ビジュアルがまた、爽やかを絵にかいたようなタイプだったから営業事務の女性陣がみんな喜々(きき)としている。
 ひとり入れ替わるだけでこんなにも営業部全体の雰囲気が変わるのかと、俺と山本さんは驚いた。

「芹沢~、徳永に人気が集中するって焦ってるんじゃないか?」

 自分の部署に戻ると、高木さんが陽気な調子で俺を揶揄してくる。
 いったい誰のせいで徳永さんが転勤になったのかまったく自覚していなさそうだし、反省も皆無だ。

 徳永さんは高木さんよりよほど人間的に優れている印象なので、女性社員の人気をひとり占めするのも無理はないし、誰かと付き合っても付き合わなくても、俺にはどうでもいい。

 たったひとりだけ……町宮にさえ言い寄らなければ。

 俺の心の中で、そんな一抹の不安がうずく。
 そして仕事を理由に町宮が徳永さんとよく関わるようになると、俺の不安も比例して増していった。


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