今さら好きだと言いだせない
「芹沢くんはお酒が強いね。たくさん飲んでも酔わないの?」
「酔わない」
「言い切った! カッコいい!」

 褒めるな。俺のなけなしの理性が吹き飛びそうになるだろ。
 これ以上酒を飲ませるのはまずいと判断して、素早く会計を済ませて店を出る。

 話の流れから、俺は徳永さんのネクタイのことを持ち出した。
 彼女が徳永さんに気があるのかどうか、なにげなく探りを入れる。

 町宮の口から徳永さん狙いではないという言葉を聞けて、俺にもチャンスがあると内心ホッとした。
 そして、あれは誰にでも不用意にする行動ではないと彼女に釘を刺す。

「男は勘違いする生き物なんだよ」

 はっきりとそう忠告したのに、町宮はまだ呑気に構えている。自分の魅力がわかっていないのだ。


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