今さら好きだと言いだせない
 それから二週間ほどが経ったある日、仕事を終えて会社の建物を出たところで、俺はある人物に呼び止められた。

「芹沢さん、お疲れ様です。少しお話いいですか?」

 俺が出てくるまでずっと待っていたのだろうか。声をかけてきたのは経理部の溝内さんだった。
 話とはなんだろう? 俺は少々身構えた。三ヶ月前に彼女から告白され、交際を断った経緯があるからだ。

「お疲れ様。どうしたの、こんな寒いところで」

 待ち伏せみたいな行動をされても……と、俺としてはやんわりとたしなめる意味もあった。
 今回は以前とはまったく違う話かもしれないが。

「すみません、どこかでじっくり話すようなことでもないので、ここで済ませますね」
「え、ああ……うん」

 手早く用件だけを伝えようとする彼女の姿勢に驚いて、少々面食らった。
 出来るだけ冷たい外気をさけるために建物のそばに寄る。

「私、以前芹沢さんにフラれましたよね。それはわかってるんです。でも、やっぱりあなたが好きです」


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