今さら好きだと言いだせない
 違う話なんかじゃなかった。これは二度目の告白だ。
 溝内さんが悪い子じゃないのはわかっている。だからといって、俺の中に恋愛感情が少しもない状態で、無理に付き合うのは違うと思う。

「私を好きになってもらえる可能性はゼロですか? 最初は形だけでもいいです。芹沢さんに恋人がいないならチャンスをください。一緒に食事に行ったりして接しているうちに、仲良くなるのも無理ですか?」

 この言葉を絶対に俺に言うぞと決めてやって来たのだろう。視線を落としたときに気づいたが、彼女は両手をギュッと握りしめて拳を作っていた。
 勇気を振り絞った行動なのはわかるし、出来るなら応じてやりたいところだけれど、こればっかりは受け入れられない。

「ごめん。気持ちがないのに付き合ったら、結局溝内さんを傷つけるから」
「ほかに好きな女性がいるんですか? 社内の人? もしかして町宮さん、とか?」

 彼女の的確な指摘に驚きすぎて、俺はゴホゴホとむせこんでしまった。
 心配して俺の背中をさする彼女に対し、俺はジェスチャーで大丈夫だと伝える。

「なんで……町宮?」

 そう尋ねずにはいられない。なぜ俺の気持ちがわかるのか、と。
 溝内さんとは部署が違うから毎日顔を合わせるわけではないし、だいたい、町宮に対する思いは俺以外誰も知らないはずなのに。

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