アンドロイド・ニューワールド
「申し訳ありませんが、それは出来ません」

と、私は言いました。

「え?どうして?」

「私の演算処理システムには、途中式を出す機能がないからです」

「…は?」

と、数学教師は首を傾げました。

同時にクラスメイト達が、ぷっ、と吹き出していました。

何か面白いものでも見えたのでしょうか。

「計算機に問題を入れると、自動的に答えが出てしまう仕組みなんです。例えるなら、通信販売と同じですね」

「つ、通信販売?」

「欲しい商品を注文した後、多くの場合人間は、その商品が自宅に届くまでの過程について、関心を払うことはありません。どの業者が注文を受け、誰が品物を用意して梱包し、どの配送業者に委託して、誰が中継地点まで運び、そこからどの配送業者が荷物を受け取り、誰が自宅に届けるかなど、注文者にとってはどうでも良いことでしょう?」

と、私は言いました。

とても分かりやすい説明であると思ったのですが、数学教師は相変わらず、ポカンとしたままです。

理解力に乏しいようです。よくそれで数学教師になれましたね。

「それと同じで、私の演算処理システムも、問題文をインプットすると、途中式を飛ばして解答だけ出す仕組みなんです。いえ、正確に言えば、システムの中で途中式は出されているのでしょうが、それを私に伝達する機能はありません」

と、私は説明しました。

「…」

数学教師は、無言でした。

ポカンとしたまま無言です。

私の説明が分からなかったのでしょうか。

やはり、理解力に難が、

「…ふざけてるのか?」

と、数学教師は言いました。

苛立っているようです。

意味不明です。

説明を受けて、納得することはあっても、腹を立てることは何もないはずです。

ましてや、ふざけているなどとんでもない。

「私は、いつだって真面目です」

と、私は言いました。

それなのに、

「馬鹿なことを言うんじゃない」

と、数学教師は怒ったように言いました。

酷いです。無情です。

私は真面目に、分かりやすい例えまで用いて、説明したというのに。

何故、分かってもらえないのでしょうか。

「馬鹿ではありません。私は事実を…」

「もう良い、自分の席に戻りなさい」

と、数学教師は憤然として言いました。

私は自分を理解してもらおうと、言葉を尽くしているのに。

彼は私の言葉に耳を傾けることなく、席に戻ることを強要しました。

私はここで諦めず、自分の正当性を主張したい…ところでしたが。

落ち着いている相手ならともかく、腹を立てている人間を相手に。

いくら弁明を繰り返しても、耳には入らないでしょう。

それに、何故かクラスメイト達も、クスクスと笑っていますし。

何か面白いものでも見えたのでしょうか。

仕方ないので、私は自分の席に戻ることにしました。
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