傾国の姫君
でもそれからの私は、ただただ毎日、茫然とするだけだった。

「慶文……正英……」

そう言葉に出す度に、涙が零れていく。

世話もしていないから、畑も荒れ放題になってしまった。


「心我。」

そんな私を心配して、照葉さんは毎日、家を訪れては何か食べ物を作ってくれた。

「元気出して。そんなんじゃ、慶文さんと正英ちゃんも、うかばれないよ。」

「うん……」

そんな事言われても、力が入らない。


憎い。

ただ憎い。

あいつらが、この村を通ったせいで、私は家族を失ったんだ。

「殺してやりたい……」

「心我、滅多な事を言うんじゃないよ。相手は秦王だからね。」

相手が王では、殺す事もできないのか。

その前に、一介の村人である私が、中央にいる王に会える訳もない。

「時間が傷を癒してくれるよ。心我。今は、生きるんだよ。」
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