傾国の姫君
「ところで心我、風呂を沸かせるか。」

「ああ。任せておくれ。家じゃあ、毎日風呂を沸かしていたからね。」

慶文はいつも、正英を風呂に入れていた。

ああ、懐かしい。

「じゃあ、明日から風呂を沸かすのは、心我に任せよう。」

「ええ!?」

水酌みもやって、舞も練習して、更に風呂沸かし?

「食事は、類がやってくれるんだろ。」

「そうだな。」

今日の食事もそうだけど、質素なのに結構美味しかった。

「食事を作れる男って、いいもんだね。」

「はっ!あんな物、誰でも作れる。」

窓越しだけど、類が笑っているように見えた。

「私は風呂から上がるから、次、類が入りなよ。」

「ああ。」

思い切って風呂桶から出た。

ちらっと窓を見ると、類は風呂場の中を見ていない。

遠慮したのか。
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