傾国の姫君
まあ、いいか。

私は脱衣所に行くと、服を着た。

ふと風呂桶の近くにある窓を見ると、類の姿はなかった。

まだ風呂を焚いているのだろう。

仕方がない。

代わろうか。


風呂小屋を出た私は、風呂を焚いている類に話しかけた。

「類、代わるよ。」

「ああ、いい。湯冷めすると大変だ。もう寝るといい。」

思ったよりも優しい言葉に、面食らった。

「じゃあ、先に休ませて貰うよ。」

「ああ。」

私は道場の横にある部屋に戻った。

小さな部屋だ。

ここで類も一緒に寝る。

余計な心配はしない。

襲われるかもしれないなんて、ただの自信過剰じゃないか。

寝る準備をしていると、香油がない事に気づいた。

「そうだ。風呂に持って行ったんだ。」
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