若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
いったい何の用事があって私の所にと考えて、すぐに昨日の光景が頭に浮かんできた。
再び怖くなって顔を強張らせると、友理奈も同じように眉根を寄せる。
「あっちは友人だって言ってたけど……大丈夫? 苦手な人なら、いないって言ってきてあげるけど」
友理奈の言葉に甘えてしまいたいけれど、昨日のこともある。
蓮さん以外のことで渡瀬先輩が私に用事などないだろう。
だとしたら、ここで逃げたら駄目な気がして、私は首を横に振る。
「ううん、大丈夫。突然だったからちょっと驚いただけ……行ってくるね」
ぎこちなく笑ってから、落ち着かないまま旅館のフロントに向かう。
わざわざこんな時間に狙ってくるなんて、嫌な予感しかない。
ロビーを見回してすぐに、ソファーに座っている渡瀬先輩の姿を見つける。
本人に間違いなく、重い足を動かして近づいていくと、彼女が私に気が付いた。
睨みつけられるだろうと身構えていたが、なぜか親しげににこりと微笑みかけられ狼狽える。
「ちょっと話があるの……ここじゃあ何だから、外で話さない?」
立ち上がった彼女に促されて、こくりと頷き返す。
より一層重くなった足を無理矢理動かしながら、私は彼女に続く形で富谷旅館の外へ出た。