若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~

曇り空の下、旅館の入り口から木陰になっているひと目のつかない場所へと進むにつれて、互いの間にある空気が張り詰めていくのを肌で感じ取る。

それに耐えきれなくなって、私は少し声を張って疑問を投げつけた。


「渡瀬先輩、私に話ってなんですか?」


ようやく渡瀬先輩の足が止まり、踵を返した。

もう笑っていない彼女と向き合えば、さらに空気が重苦しくなっていく。


「単刀直入に言うわね。蓮君と別れて欲しいの」


いつかは言われるような気がしていた言葉を真っ直ぐ突きつけられ、一瞬頭の中が真っ白になる。


「私には蓮しかいないの。お願い」


しかし、続けて呟いた渡瀬先輩は、少しいつもと違っていた。

拳を握りしめて、苦しそうに、そして今にも泣き出しそうな声で訴えかけてくる。

蓮さんのことに関しては強気な彼女しか知らないから、弱々しく見えるその姿に戸惑いを隠せない。

けれど、ここで黙るわけにはいかないと、私も震える声で自分の気持ちを言葉にする。


「……それはできません。私だって同じなんです。蓮さんが好きで、彼しか考えられません」


蓮さんのことで一喜一憂するのは、彼が大好きだから。

そして心の中にある強い想いは、渡瀬先輩に彼を渡したくないということ。

< 106 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop