若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~

蓮さんに関しては当たっているだろう。

私たちは婚約者のふりをしていただけで、渡瀬先輩の言う通り、結婚なんてするつもりはまったくなかったと思う。


「でも最近の蓮君を見てると不安しかない。あなたとの結婚をはっきり言葉にするようになってきて」


渡瀬先輩は両手で顔を覆い、僅かに肩を震わせる。

続け様に目にする弱々しさに、私も改めて戸惑う。

追い詰められているかのように渡瀬先輩が「お願い、蓮君と別れて」と悲痛な声で繰り返す。

私だって、本当は「蓮さんに近づかないで欲しい」と喚きたい。

けれど、渡瀬先輩の重い空気にのまれ、それは言い出すことができなかった。

それでも、これだけは譲りたくなくて、断続的に続く訴えを終わらせるように、ひと言強くはっきりと告げた。


「私は蓮さんとの婚約を破棄するつもりはありません。このまま彼と、結婚したいと思っています」


私の「結婚」という言葉に反応するように渡瀬先輩は勢いよく顔を上げて、涙で濡れた顔に絶望を滲ませて私を見つめてくる。

このまま引いて欲しいと願いながら、私も渡瀬先輩を見つめ返す。

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