若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
『最高の夜だったわ』と微笑んだ渡瀬先輩の顔が脳裏に鮮明に蘇ってきて、私はその場にしゃがみ込む。
渡瀬先輩のところに行かないで欲しいと痛む胸を手で押さえれば、目から涙が流れ落ちていった。
その日の夜遅く、「お休み」というひと言だけ、彼からメッセージが届いた。
結婚は、本当に大切に想う相手とするべきだ。
だから蓮さんとは、ちゃんと話し合ったほうが良い……そう頭ではわかっているのだけれど、別れを告げられるのが怖くて彼の前に行くのを躊躇ってしまう。
その翌日も、「風邪気味だから」とだけメッセージを送って、私は家に帰らなかった。
何度か蓮さんから電話が来たけれどそれに出る気になれず、放置してしまった。
ひとりっきりの眠れぬ夜を過ごして、朝になり、ようやくこのままではいけないと心を決める。
今日はちゃんと帰って、蓮さんと話し合おう。
彼を失いそうで怖くてたまらないけれど、引きこもっていても不安な時間が長引くだけだ。
旅館の仕事の忙しさであっという間に時間は過ぎていく。
一日の仕事を終えて、富谷旅館から駅に向かう途中で、蓮さんからメッセージが届いた。