若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
その前に本社近くで待っていると伝えておいたほうが良いだろうと考えてスマホを手に持った時、本店の前に蓮さんの車が停まっているのに気が付いた。
迷いながらも、足は真っ直ぐ彼の元へと向かって進み出す。
思っていたよりも早く会えてしまいそうだとそっと店の外から店内の様子を伺い、息をのむ。
確かに店の中に蓮さんの姿があった。
ショーケースを覗き込みながらその向こうに立つ女将さんと話をしているその横に、渡瀬先輩もいた。
彼の隣にいるのが当たり前の顔で、楽しそうに笑っている。
女将さんもニコニコしていて、時折見える蓮さんの横顔も明るくて……まるで家族のように見えた。
私には届かない遠い世界の光景を見ているような気持ちになり、ふらりと足が後退する。
私の中に残った感情は絶望だけ。
息苦しくて呼吸を乱しながら一歩、二歩と後ずさって、握りしめていたスマホを持ち直す。
この場から逃げ出したくて勢いよく踵を返した瞬間、目の前に現れた人にぶつかりそうになり、「すみません」と頭を下げた。
そのまま歩き出そうとしたが、「里咲ちゃん」と不思議がる声音と共に腕を掴み取られてしまった。