若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
ハッとし顔をあげると、自分の腕を掴んでいる璃子さんと目が合い、ついさっきぶつかりそうになった人物が蓮さんの姉の璃子さんだったことに気付かされた。
「蓮から具合悪いって聞いてたけど、大丈夫……じゃなさそうね。ちょうど今、蓮も来てるし、中で少し休んだら?」
そのまま腕を引かれて本店へ連れて行かれそうになり、私は必死に首を横に振る。
目に涙が浮かんだ私を見て、璃子さんはすぐに動きを止めて、唖然とした顔をした。
そして数秒本店へと目を向けて、「あ」と察したような声を短く発する。
「美味しいコーヒー、飲みに行かない?」
璃子さんが方向転換し、本店とは逆の方向を指差した。
私もいつまでも蓮さんと渡瀬さんが一緒にいる本店の側にいたくない。
スマホをバッグに戻して、すぐに頷いた。
向かったのは、そこから五分ほど歩いた先にある落ち着いた雰囲気の喫茶店。
店内はテーブル席が五つほどとカウンター席が数席ある程度の広さ。
璃子さんには馴染みの店らしく、やって来た三十代くらいの女性店員に空いている奥のテーブル席を気軽な口調で指定する。