若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
「ここ、私の友達のお店なの。コーヒーだけじゃなくて、ケーキとかランチも美味しいからこれから贔屓にしてあげてね」
向かい合わせに腰掛けながらの璃子さんからの笑顔での宣伝に、苦笑いでぎこちなく「はい」と答える。内心では、もうここに来ることはないかもしれないと切なくなりながら。
蓮さんが渡瀬先輩を選んで、婚約が解消されれば、私はもうヤツシロ本店や本社のあるこの辺りには近づかなくなるだろう。
こうして璃子さんと話をするのもこれが最後かもしれない。
寂しさを感じながら目を合わせると、璃子さんがふふっと笑った。
「蓮ってすっごい鈍くて、その上不器用だし、ちゃんと言わないとわからないかもね」
先ほどの店員がやって来きて、璃子さんはコーヒーをふたつ注文する。
そして、店員がテーブルを離れた後、私をじっと見つめながら問いかけてきた。
「里咲ちゃん、具合が悪くて実家に戻って休んでるって、蓮から聞いて心配してたけど……その体調不良の原因って、もしかして渡瀬さん?」
余計な心配をさせてしまったと申し訳なさで頭を下げて、正直に打ち明ける。