若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
「おはよう」
艶のある黒髪、綺麗な白い肌。切長の目。百八十センチあるすらりとした体型に、しわひとつないワイシャツがよく似合っている。
素っ気なくも凛と響いた声と、にこりともしない面持ち。
近寄りがたくも思えてしまうが、学生の頃から知っていて一緒に暮らすようになってからもうすぐ一年が経とうとしている私にとっては、それも彼の魅力のひとつだ。
朝から爽やかな横顔をつい見つめていると目があってしまい、見惚れていた気まずさと眼差しの圧に狼狽えるように視線を逸らす。
彼は遅く帰ってきては朝早く家を出ていく生活を送っているため、平日に姿を見かけるのはあまりない。しかし見かけると、いつも素敵でため息が出そうになる。
挨拶もそこそこにカウンターキッチンへと移動し、冷蔵庫を開ける。
朝ごはんを作るために卵とハムを手に取って振り返ると、蓮さんと再び目が合った。
何を食べるのかと言った様子で私の手元を見ている……気がする。
「時間があるなら、蓮さんも一緒に食べますか? 作るのはハムエッグですけど」
聞かずにはいられなくなって問いかける。
すると蓮さんは少し迷うような表情を浮かべてから、ゆっくり首を横に振った。