若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
慌てた様子で室内を見回していた蓮さんと目が合って、気まずさを覚えながら話しかける。
「お帰りなさい。……あの」
話したいことはいっぱいあるのに、彼を目の前にして頭の中が真っ白になり、言葉が詰まった。
とりあえず、家に帰らずにいたことを謝っておこうかなと考えている間に、蓮さんがやってきて、私を引き寄せる。
力一杯抱きしめられて、再び思考が停止した。
「体調は大丈夫か? 心底、心配した」
「ごめんなさい。風邪気味っていうのは、嘘なの」
思い切って打ち明けると、蓮さんが僅かに目を大きくさせる。
「どうして……もしかして、この前俺が帰宅しなかったことが原因か? あの時は、残ってた仕事をもう少し片付けておきたくて本社に戻って」
「それは聞いたし、嘘じゃないと思ってる。……けど」
「けど?」
「会社に戻ったのはいつ? 食事会が終わった後、タクシーに乗ってそのまま向かった訳じゃないでしょ?」
「タクシーか」と私の言葉を反芻しながら蓮さんは頷き、しかしすぐに驚いたように私に視線を戻してくる。