若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
「本当は、タクシーには俺ひとりで乗るはずだった。でも酔っていたからか、渡瀬が乗り込んできた。まったく降りてくれなくて、そのまま家まで送ることになったんだ」
不意に、タクシーに乗り込む前、渡瀬先輩と目が合ったような気がしたのを思い出す。
タクシーに乗り込んだのは私への当て付けだったと考えたら、実際にはそこまで酔っていなかったのではとも思えてきて、苛立ちが込み上げてくる。
「マンションの前で降ろすつもりだったけど、そのまま道端で眠りそうになってるし、危なっかしくて放置できず、俺も一緒にタクシーを降りて玄関まで付き添った」
そこで蓮さんが言いにくそうに視線を外したため一気に不安が湧き上がり、彼を掴んでいた手が僅かに震える。
すると、蓮さんが私の手に自分の手を重ね置き、淡々と話し出す。
「休んで行けってネクタイを外されて……俺を誘ってたのかもしれないけど、渡瀬に興味ないし、適当にあしらった。もちろん玄関から先には入ってない。途中で呼んでおいた航がすぐに来てくれたから、渡瀬を押し付けて俺はそこを離れた。俺がいたのは正味五分程度」