若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~


「千秋と話しているうちに蓮が怒って、ネクタイをゴミ箱に投げ捨てたんだ。お前との友人関係はこれで終わりだって怖い顔で宣言して、次、里咲を苦しませるようなことをしたらただじゃおかないって、その場から千秋を追い払った」


怒ってくれたんだとちょっぴり嬉しくなってしまった私をにやりと見て、溝田先輩は続ける。


「蓮って、普段は何事に対しても無関心な奴なのに、和菓子と里咲ちゃんのことに関しては別だよな」

「俺がなんだって?」


静かに店内へと入ってきた蓮さんに声をかけられ、溝田先輩は本気で驚き、そして心なしか怯えた素振りも見せた。

思わず笑ってしまった私につられるように、ふたりも笑みを浮かべた。

それから二組ほど客の応対をしたところで時間となり、店の奥から戻ってきた女将さんと共に閉店作業を行う。

その間も、溝田先輩と蓮さんは店の隅でにこやかに話をしていて、そんなふたりの姿を見て「あのふたりは変わらないわね」と女将さんが呟き、私も同意する。

「一緒に飯を食いに行こう」と何度も誘ってくる溝田先輩を、蓮さんが「やめとく」とことごとく拒否しつつ、私たちはシャッターを閉めた店の前で別れた。

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