若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
私はまだ蓮さんが好き。
なんなら共同生活を始めて彼を近くで感じるようになってから、昔よりももっと好きになってしまっている。
「仕方ないよね。蓮さん、素敵なんだもの」
高校の頃も格好良かったけれど、三十代に突入した彼は大人の魅力もあわさり、さらに素敵になったように思える。
いつか一緒に朝ごはんも食べてくれたらいいな。
そんな願いを抱きながら、ちらりと視界に入った時計の時刻に「もうこんな時間!」と慌てて、急いで朝食作りに取り掛かった。
蓮さんと暮らすマンションから電車と徒歩で三十分ほどの場所に私の実家と、実家が経営する富谷旅館があり、旅館では主に私はフロント対応や客室案内を任されている。
チェックインを済ませた宿泊客を部屋へ案内し、夕食の時間やお風呂の場所などを説明してから微笑みとともに深くお辞儀をして廊下へ出た。
今さっき案内したのは私と同年代の夫婦。
とても仲が良くて見ているこっちまで幸せな気分になる。その一方で、私と蓮さんもそうなれたら良かったのにと切なくなる。
フロントへ戻るべく廊下を進みながら思わずため息をついた時、前方からこちらにやってきていた調理服姿の男性と目が合った。