若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
私はすでに諦めてもいたのだが、三人という数少ない募集枠の中に運よく入ることができたのだ。
部活動を通して徐々に蓮さんと話すようになり、私の中にあった憧れがいつしか恋心へと変わっていき、そして蓮さんの卒業式当日、勇気を振り絞って告白しようとしたけれど……出来なかった。
蓮さんには、お似合いの彼女がいたからだ。
ふたりは同じ大学に進学したと聞いていたし私は違う大学だったため、そこで完全に関係は途切れてしまったけれど、不意に蓮さんと彼女のことを思い出しては、切なくなることがあった。
新しい恋もできないまま大学生活も終わりを告げ、祖父同士が知り合いだった関係で蓮さんとのお見合いの話が持ち上がったのだ。
現実味がなく、どこかふわふわした気持ちのまま指定された料亭へと向かった。
通された個室にはすでに蓮さんがいて、本人を目の前にしてもまだ夢を見ているような気分だった。
とは言え、久しぶりに会えたのは嬉しくてたまらなかった。
彼女がいてもヤツシロの社長である祖父の手前、そして私とも知らない仲ではないため、蓮さんはこの見合い話を断り辛く、仕方なく顔だけ合わせることにしたのだろうと思っていた。