若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~

そして「蓮さん」と呼びかけようともしたが、彼の陰からひょっこり覗かせた顔に声が出なくなる。


「……渡瀬先輩」


かけていたのは四人がけのテーブル席。

しかし渡瀬先輩は彼の向かいではなく、隣の席に腰掛けていた。

チラチラと見え隠れする嬉しそうな顔に、もやもやとした感情が体の中で広がっていく。

二日連続で会ってしまうなんてと不満も湧き上がるが、すぐに私が知らなかっただけで、もしかしてふたりは毎日のように会っているのではという思いにとらわれる。

何か和食が運ばれてきて、渡瀬先輩が嬉しそうに顔を綻ばせた時、不意に視線が私を捕らえた。

あっと息を飲んだ次の瞬間、彼女は蓮さんの肩に手を回すようにして触れる。

スマホを見つめていた蓮さんが渡瀬先輩へと顔を向ければ、ぴたりと顔が重なって見えた。

それはまるでキスでもしているかのようで、私はたまらずその光景から顔を背け、歩き出す。

今のは違う。キスなんかしてない。ただ顔が重なって見えただけ。……そうであって欲しい。

不安が膨らみ、胸がきゅっと締め付けられる。

涙も込み上げてくれば、もう店内にもいたくなくなっていく。そのまま外へ出ようとすると、店舗の入り口のところで男性とぶつかりそうになった。

< 51 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop