若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
その日がやって来ただけのことと思えば良いのに、もう少し蓮さんと一緒にいたくて切なさで胸が締め付けられる。
私がいなくなれば、きっと渡瀬先輩との結婚話を進めるだろう。
もちろんそれは偽りの関係なんかではなく、生涯の伴侶としてだ。
嫌だけれど、やっぱりふたりはお似合いだ。
私が渡瀬先輩と張り合ったところで、勝てる気など全くしない。
盛大なため息をついた時、勝手口から高梨君が出てきた。
両手を伸ばしてストレッチしながら、彼が私に気がついた。
「里咲さん、お疲れ様です」
「お疲れさま」
ゆっくりと歩み寄ってきた高梨君は、おもむろに私の顔を覗き込み、ムッとしかめっ面をする。
「婚約者様と喧嘩でもしたんですか?」
「喧嘩なんて……ただ私が一方的に文句を言ってしまったというか」
揶揄的に飛び出した「婚約者様」という部分に不快感を覚えつつも、当たらずとも遠からずの鋭い指摘に、思わずぎくりとしてしまう。
たどたどしく答えると、高梨君は憤りの混ざったため息をついた。
「里咲さんにそんな顔をさせているのだから、なんかあったんですね」