若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
煩わしさを感じているだろうと思ったのに、私を見つめる眼差しからは切なさや苦しさしか伝わってこなくて、僅かに混乱する。
赤から青に信号が変わり、停止していた車も再び動き出す。
沈黙が続き、やがて車は私たちが暮らすマンションに到着する。
駐車場に車を停めると、蓮さんは背もたれに深くもたれかかって、息をついた。
「昼間電話で、婚約解消した方がいいと言った理由は、さっきの男の元に行きたくなったからか?」
静かな車内にぽつりと響いた問いかけに、私は驚いて蓮さんを見る。
もちろん違う。高梨君が私を気にかけてくれているのはわかっているけれど、私はその気持ちに応えることはできない。
どんなに希望は薄くても、私が好きなのは蓮さんだから。
どんどん蓮さんを好きになってしまう。
だから渡瀬先輩の存在が苦しくてたまらない。
蓮さんにとって自分は偽りで、渡瀬先輩こそ真実だと思い知らされるたび、泣きたくなるのだ。
「……そうかもしれませんね」
私はもう蓮さんから離れるべきなのかもしれない。
投げやりな気持ちで言葉を返し、数秒後、蓮さんは何も言わずに車を降りた。