若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
蓮さんが言っていたように、本当に私を特別に思ってくれていたとしても、その想いには応えられない。
心を込めての「ごめんね」に、頭も下げると、高梨君は少し寂しげに笑ってから、私の背中を叩いた。
「どうやらそうみたいですね。婚約者さんに送ってもらうの初めて見ましたし。問題ないならそんな顔はもうしないで下さい。里咲さんは笑っている方が断然素敵なんですから」
それだけ言うと、高梨君は明るい笑顔を残して先に旅館の中へと入っていく。
年下の子に励まされてしまったと笑みを浮かべ、私も力強く一歩を踏み出した。
蓮さんとの時間が増えるに比例して、幸せを感じる頻度も多くなる。
時折不器用ながらも彼が優しく自分を扱うたび、このまま彼と結婚まで辿り着けるのではと心の中で期待が顔をだす。
もちろん、期待してはいけないと自分に厳しく言い聞かせるところまでがセットだ。
とは言え、振りでも何でも八津代蓮の婚約者である以上、必要となればその役目を果たさねばならない。
運転席を降りて、助手席側へと回ってきた蓮さんがドアを開けて、恭しく手を差し伸べてくる。
私はその手をとって、緊張気味に車を降りた。