若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
頭を下げたり硬い表情で言葉を交わしていたりと、こちらとは違ってまったく気の休まらない会食だというのは見てとれ、思わず「蓮さん、お疲れさま」と心の中でねぎらいの言葉をかける。
じっと蓮さんのいる方を見つめていると、隣に立っている同期で一番仲が良い芦田友理奈が腕を絡めてきた。
「……辞めちゃうの、本当に寂しいな」
彼女は同じくフロントを担当しているからか、何度もそう繰り返してくれている。
「でも私、富谷旅館は実家でもあるし、帰ってくれば顔を合わせることもあると思うから、その時は優しく迎えてね」
微笑みと共にそう返すと「もちろんよー!」と彼女が私に抱きつき、年下の子たちも一斉に抱きついてきた。
「私、里咲さんに恋愛相談乗ってもらいたかったです」と年下のひとりが言えば、友理奈が「私が代わりに聞くわ」と少し得意げな顔をする。
しかし、「えー。結婚目前の里咲さんからアドバイスもらいたいです」と後輩が不満を漏らし、「何よそれ!」とその場が笑いに包まれた。