若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
賑やかな雰囲気の中で私も笑っていたけれど、再び蓮さんの方へ視線を戻せば、一瞬で楽しい気持ちが吹き飛んでいった。
通りの向こう側に彼はまだいたけれど、いつの間にかその隣に渡瀬先輩も立っていたのだ。
しかも今私が友理奈にそうされているように、彼の腕に細腕を絡ませている。
蓮さんとは違って、彼女はとても気安い様子で周りの人々と話をしていて、僅かに笑い声も響いてくるほど。
時々気にしている素振りがうかがえるが、しかし蓮さんは渡瀬先輩の手を振りほどこうとはしない。
渡瀬先輩も離れるどころかしなだれるように蓮さんの腕にもたれかかり、見ているこっちは思わずしかめっ面になる。
割って入っていきたい、けど……と、いつものように考えて数秒後、今の私にはその権利があると気付く。
もう偽りの関係ではない。
蓮さんの恋人は私なのだから、渡瀬先輩に対してもう少し強く出たって問題ない。
頭ではそう思うのに、心に根付いている怖い先輩という強力なイメージから、どうしても足が動かない。
自分の中の弱さと闘っていると、通りの向こうにタクシーが三台停車した。
一台目に乗り込む人々を見送るように蓮さんと渡瀬先輩が並び立つ。