君の知らない恋の話

私の両親は残念ながら、どちらも仕事で来れなかった。二人とも今海外にいて、今朝「入学式だよね、おめでとう！」とメッセージが送られてきた。

海外出張で仕方ないとはいえ、入学式で一人なんて少し寂しい。お祝いに今日は食べに行こうか、なんて会話を聞くと胸が苦しくなる。その時、澄んだ綺麗な声が聞こえてきた。

「みっちゃん！桜、すごく綺麗〜」

あまりに綺麗な声に振り向くと、満開に咲いた桜の木の下で制服を着た同じ一年生が数人、はしゃいでいた。その中の一人を見た刹那、私の目が釘付けになる。頬が赤く染まり、自身の鼓動が早くなっていくのを感じた。

ブラウンのふわふわした肩より少し長めの髪に、ぱっちりとした二重の大きな目、薄ピンクの唇、白い雪のような肌ーーー。桜の木の下で笑っている彼女は、まるで花の妖精みたいに可憐で、目が離せない。

この気持ちは、一体何？初めて感じた気持ちに私はただ戸惑っていた。



長ったらしくてつまらない入学式が終わり、それぞれ教室に入る。クラスメートの中には桜の木の下にいたあの子もいて、何故か嬉しいと感じた。