君の知らない恋の話
胸が苦しくてたまらなかったけど、和子ちゃんが幸せになってくれるならいい、そう自分に言い聞かせた。

彼氏ができてしばらくすると、和子ちゃんの長かった髪はショートカットになっていた。彼はどうやら、ショートカットが好みらしい。

「今度、新しい服を買いに行くの。彼ね、スポーティーな服が好きなんだって」

ふわふわしたレースのついた服が好きな和子ちゃんは、彼の好みになりたいと知らない女の子に変わっていく。そして、仲良さそうに手を繋いで、私の知らない名前を呼んでいる姿を何度か見た。そのたびに苦しくて、痛くて、死んでしまいたいと思ってしまう。

「何なのよ、これ……。和子ちゃんは幸せそうじゃない……」

和子ちゃんには、あの彼がいないとダメだ。あの彼から離れたら、可憐な笑顔は失ってしまう。だから、どんなに辛くても気持ちを押し殺して笑った。

でも、二年生になった夏頃、和子ちゃんと彼は大喧嘩をした。どうして喧嘩になったのかは知らない。でも、二人は仲直りができずにそのまま別れることになってしまった。
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