君の知らない恋の話
「……わ、私が!私が、もっといい子、だったら……」

放課後の教室、短くなった髪がエアコンの風で揺れる。和子ちゃんは私のそばで泣きじゃくった。こんなにも泣いている和子ちゃんを見るのは久々で、胸がギュッと締め付けられる。

私なら、きっと和子ちゃんをこんな風に泣かせない。和子ちゃんを守りたい。そばにいたい。

「私なら、きっと和子ちゃんを守れるのに……」

思わず和子ちゃんを抱き締めて、そう呟いていた。和子ちゃんは私の腕の中で、泣きながらクスリと笑う。

「じゃあ、美帆ちゃんは私の騎士様ね!頼もしいわ!」

そのまま、ずっと抱き締めあっていた。和子ちゃんの優しい心音が心地よくて、このまま時間が止まってほしいと思った。遠い場所へ二人で消えたい。二人きりの世界へ逃げたい。そう思いながら、短い髪を撫でる。

「長い方が好きだったな……」

そう言うと、和子ちゃんは顔を上げる。目が泣いたせいで真っ赤になって腫れている。でも、はにかみながら笑ってくれた。
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