廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「何かあったのか?」

「……いえ。何もございません」

そう答えると、ユーディリアがニヤリと笑った。
私がダリオンに報告しないことを安堵したのだ。

「本当か?」

「エスカーダ公。私たち、立ち話をしていただけですわ。特に何も……」

「私はルキアに聞いている。口を挟まないでくれ」

「ですが、私……」

尚も話しかけようとするユーディリアに、ダリオンは冷たく言った。

「聞こえなかったか?私とルキアの会話に入るな。去れ」

「……は、はい!で、では、失礼致します」

しどろもどろになりながら、ユーディリアと令嬢たちは小走りで退散した。
大英雄ダリオンの覇気はそれ程までに人を威圧する。
残された私も、彼の前で硬直するしかなかった。

「さて……」

ダリオンは屈むと、私の足元を凝視した。

「あの……ダリオン様……?」

「上から見ていた。足を踏まれていただろう?」

「えっ?見て……いたのですか?」

「来たばかりで、全てを見てはいない。だが、様子がおかしいのには気づいた。話をするだけで、あのように取り囲むことはないだろうからな」

そうか。
階段の上からだから、中心にいた私が見えたんだわ。

「ご迷惑をおかけしました……」

「そんなことより、手当てが先だな。歩けるか?」

「もちろんです!」

私は調子に乗って、勢い良く一歩踏み出した。
こんな状況でも、ダリオンと会話が出来たことが嬉しかったのだ。
しかし、踏み出した足は踏まれた方の足で、床に付くと同時に激痛が走った。

「うっ……」

「おい、ちょっと待て!まさか……!」

ダリオンは叫びながら、私を抱きかかえた。
そして、何が起こったのかわからない私を連れて王宮広間を駆け出したのだ。
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