廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
5、大英雄の怒り

「待ってください、ダリオン様!サロンにまだおばあ様が……」

「後でエレナに迎えに行かせる」

「い、いえ、あの、でも……」

「黙っていろ。怪我人が先だ」

ダリオンは広間を抜け、王宮の外へと出た。
そこで、馬を厩舎へと戻していた兵士に近寄ると、それを借用し、手早く私を前に乗せた。

「どちらへ……?」

その問いかけに、ダリオンは答えなかった。
ただ、額にじんわりと汗をかき、真っ直ぐ前を見て馬を駆る。
彼には珍しく、少し焦りが見えた。
馬は私たちを乗せて、宵闇のロダンを疾走する。
暗くて景色は良く見えなかったけれど、暫く行くと、見覚えのある看板が目に入った。

「……診療所?」

ダリオンは粛々と馬から降りて私を抱えると、診療所の扉をドンドン叩いた。
当然、診療所は営業を終えている。
ガラス越しにうっすら見える待合室も真っ暗で人の気配もない。
しかし、ダリオンが扉を殴打する音に気付いたのか、やがて待合室が明るくなり人の声がした。

「どちら様ですか?」

「ダリオン・エスカーダだ。急いで診て貰いたい者がいる」

「エスカーダ公!?お待ちを!今すぐ扉を開けます!」

その言葉通り、すぐに扉は開き、そこには慌てた表情のトマスがいた。
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