廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「……手当てを頼む。外に出ているから、終わったら呼んでくれ」

「かしこまりました」

低く呟くと、ダリオンは診察室を出ていった。
その後ろ姿が扉の向こうに消えると、ふぅとトマスはため息を付いた。

「エスカーダ公は相変わらずの迫力だ……しかし、あの方が焦っている姿は初めて見ました」

それは私も同じだった。
心が鉄で出来ているダリオンの動揺は、天変地異が起こったかのような衝撃である。

「でも、今はそれよりも、まずはこのケガのこと。何があったかは詳しく聞きません。ですが、医者として、原因が何であったのかをお聞きしたい」

「……え、と。踏まれまして……」

「馬にですか?」

「人に……女性なのですけど……」

すると、トマスは目を見開いた。

「女性!?なんとまぁ……馬や牛並みの筋力があるとは。北の鉱山で労働者として働くと良いかもしれませんね」

「鉱山……」

ユーディリアがツルハシを持ち、鉱山で働く……その様を想像し、思わず頬が緩む。
案外、そっちの方が似合うかもしれない。
トマスは会話をしながらも、素早く足先に副木をし、丁寧に包帯を巻くと言った。

「さてと。暫く不便ですが辛抱して下さい。なるべく動かさないように。明日の午後、様子を見に寄りますので」

「はい。お手数をおかけします」

「いえいえ、お大事に。では、ダリオン様を呼んで来ます」

トマスが踵を返すと、私の背筋に緊張が走った。
こんなに迷惑をかけてしまったら、きっと滅茶苦茶怒られる。
いや、怒られるだけならいいけど、もう話してくれないかも。
ああ……あれほど迷惑をかけないようにと、誓ったのに……私のバカ!
でも、どんなに悔やんでももう遅い。
おとなしく、ダリオンのお叱りを受けよう。
トマスが診察室を出ていってから数十秒後、当のダリオンはやって来た。
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