廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「エスカーダ公爵様、カトレア様。支配人でございます。少しよろしいでしょうか?」

「あら、ロナルド?どうぞ?」

おばあ様が答えると、支配人は恭しく扉を開けた。
白髪の背の高い紳士は、礼儀正しくお辞儀をすると、おばあ様に向かって目尻を下げた。

「お久しぶりでございます。今回の演劇はどうでしたか?」

「大変満足してよ。私、ハッピーエンドが好きなのだけど、悲恋もたまにはいいものね」

「おお、それは良かった。おや、こちらのお嬢様がもしや、巷で噂のルキア様で?」

巷で噂?
それ、何かしら?

「そうよ。我がエスカーダ家のルキアよ」

首を傾げていると、おばあ様がぐいっと私を前に出した。

「ル、ルキアです。よろしくお願いいたします」

「こちらこそ、ルキア様。支配人のロナルド・ルーデンバーグでございます。商業区では、癒しの女神の異名で有名でございますね」

「癒しの……女神……?」

有名でございますね、と良い笑顔でいわれても、こっちは初耳である。
困っていると、ニンマリと悪い笑顔のおばあ様と目が合った。
もしかして……また、なにかやりました?
いや、大概のことではもう驚きませんよ、私。
支配人は品の良い微笑みを浮かべると、またおばあ様に向き直った。

「あの、実はエスカーダ家の皆様方にお会いしたいと、アルカディア劇団の座長が申しておりまして……如何なさいますか?」

「あら、私たちに?そうねぇ……わかったわ。会いましょう」

「かしこまりました。では、劇場応接室にご案内致しましょう。座長のアレスト様もそこでお待ちです」

私たちは支配人のあとに続き、部屋を出た。
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